甲状腺のしこりが見つかり、細胞診を受けることになった方へ
穿刺吸引細胞診とは、注射針を腫瘍に刺して腫瘍細胞を採取し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。
甲状腺の結節(しこり)が見つかると、「がんではないか」「細胞診は痛くないか」「本当に正確に診断できるのか」と不安に感じる方も多いと思います。
穿刺吸引細胞診は、甲状腺の結節に針を刺して細胞を採取し、良性か悪性かを調べる重要な検査です。一方で、結節の位置や内部の性状によっては、細胞を十分に採取することが難しい場合があります。
当院では、単に「結節に針を刺す」のではなく、超音波画像を詳しく確認し、どの部分から、どの方向に、どの方法で細胞を採取するのが適切かを考えながら検査を行っています。
細胞診に対する不安を少しでも減らし、必要な検査を安心して受けていただけるよう、甲状腺診療を専門とする医師・検査スタッフが丁寧に対応いたします。
「細胞診を受けるのが不安」「以前の細胞診で十分な細胞が取れなかった」という方も、どうぞご相談ください。
検査の手順
ベッドに仰向けになるか、バーバーチェア(理容椅子)に座って首を伸ばしていただいたうえで、超音波検査装置で腫瘍の位置を確認しながら、針を刺して細胞を採取します。
検査に使用する針は、採血に使われる針と同じ太さの針を用います。
針を刺す時の痛みは、腕からの採血とほとんど同じで、麻酔の必要はありません。
1つの腫瘍に対し1~2回針を刺し、1回あたり数秒で終了します。

針を刺す方法には「平行法」と「交差法」があり、どちらの方法で行うかは検査実施施設により異なります。
検査終了後
針を刺したところを5~15分ほど指で押さえていただき、止血を確認した後、帰宅となります。
抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の場合は、検査の数日前から休薬いただくか、針を刺した後に20分ほど指で押さえていただき、止血時間を長めにとります。
(針を刺したところを指で押さえていただく時間や抗凝固薬・抗血小板薬服用中の方への対応は、検査実施施設により異なります。)
検査に伴う合併症
検査後に次のような合併症を起こすことがあり、「痛み」や「血管迷走神経反射」以外の合併症は極めてまれです。
痛み
痛みは検査中に限られ、1回目よりも2回目に針を刺した時の方が痛みが強いことが多いです。
まれに、数日~10日ほど痛みが続くことがあります。
血管迷走神経反射
針を刺した後に血圧が下がって気分が悪くなったり、徐脈(脈が遅くなる)や失神を起こすことがあります。
検査時の過度な緊張によるものと考えられますが、0.45~1.28%の頻度で起こると報告されています。
頭を低く、下肢をやや高めにし、仰向けになって休んでいただくと、数分で回復します。
出血、血腫、皮下出血
穿刺した針が血管を損傷したり、検査後の圧迫止血が不十分であると、出血したり、血腫(血液のかたまり)ができることがあります。
出血が高度な場合は入院し、経過観察が必要となることがあります。
痛みを伴って首が腫れ、呼吸困難をきたす場合は、手術により血腫を除去します(過去の報告例は数例で、いずれも検査直後から2時間程度で発症しています)。
皮下出血(青あざ)の場合は、重篤になることはなく、1週間程度で皮下のあざは消失します。
急性一過性甲状腺腫大(ATTS:Acute Transient Thyroid Swelling)
針を刺した刺激により、急激に甲状腺が痛みを伴って腫れることがあり、発症頻度は0.13~0.15%と報告されています。
針を刺した直後から4時間以内に発症することが多く、1~20時間で自然軽快します。
痛みや腫れが強いときは、冷却や解熱鎮痛剤の服用、ステロイドの点滴注射が行われることがあります。
急性化膿性甲状腺炎
発症頻度は0.1%未満と極めてまれですが、針を穿刺した経路より、甲状腺腫瘍に細菌が入り込み、炎症、化膿を起こすことがあります。
甲状腺は血液の流れが豊富で、殺菌作用のあるヨウ素を含んでおり、感染症を起こすことはほとんどありません。
糖尿病、免疫不全、アトピー性皮膚炎などが細菌感染症のリスクとされています。
反回神経麻痺
針を刺した後に、声帯を動かす反回神経が麻痺を起こし、声がかれることがあり、発症頻度は0.036~0.85%と報告されています。
検査の翌日~2日目に起こり、2~6か月までには自然軽快します。
穿刺した針が直接神経を損傷するのではなく、穿刺に伴う血腫や炎症が神経の圧迫や伸展を引き起こすことが原因と考えられています。
穿刺経路再発
針を腫瘍に刺した後、針を抜く経路で針先から癌細胞がこぼれ、皮膚や皮下脂肪、筋肉に癌が再発することがあります。
頻度は穿刺5年後で0.15%、10年後で0.37%と報告されており、再発病変の局所切除が行われます。
検査結果について
細胞診では診断が難しい腫瘍もあるため、本検査の正確さはおおむね85~95%とされています(検査実施施設による違いがあります)。
細胞診で良性と判断されても悪性の腫瘍細胞が潜んでいる場合もありますし、細胞診で悪性が疑われ、手術後に良性と診断されることもあります。
また、濾胞腺腫(良性)と濾胞癌(悪性)の見分けは難しく、必ずしもわかるものではありません。
したがって、細胞診で良性と診断されても定期的に受診し、超音波検査で腫瘍の大きさや形の変化などを調べることが必要です。
当院では、細胞を「適切に採取する技術」も大切にしています
甲状腺の細胞診は、結節が良性か悪性かを判断するうえで非常に有用な検査です。
一方で、結節の性質や位置によっては、診断に必要な量の細胞を十分に採取できないことがあります。一般に、約10%の甲状腺結節では、細胞を十分に採取することが難しいとされています。
特に、結節が小さい場合、深い位置にある場合、嚢胞成分が多い場合、硬い結節の場合などでは、超音波画像を確認しながら、結節の状態に応じて適切に穿刺する技術と経験が必要になります。
そのため、甲状腺の細胞診では、単に「結節に針を刺す」だけではなく、超音波で結節の状態を正確に把握し、診断に必要な細胞を適切に採取することが重要です。
甲状腺超音波ガイド下穿刺診断専門医を含む5名の細胞診プロフェッショナル
当院では、「甲状腺超音波ガイド下穿刺診断専門医」の資格を有する院長を含め、5名の細胞診に精通した医師が穿刺を担当しています。
甲状腺の細胞診では、超音波で結節の大きさや形態、内部性状、周囲の組織との位置関係などを確認したうえで、適切な部位から細胞を採取する必要があります。
そのため、穿刺手技だけでなく、甲状腺超音波と細胞診の両方について専門的な知識と経験を有していることが重要です。
当院では、甲状腺診療を専門とする医師が、超音波画像を確認しながら、一つひとつの結節の状態に応じて細胞診を行っています。
甲状腺を専門とする細胞検査士による検体評価
細胞診では、細胞を適切に採取する技術だけでなく、採取された細胞を正確に評価することも重要です。
当院では、細胞診の判定を外部検査機関に依頼していますが、判定が困難な症例については、日本臨床細胞学会認定細胞検査士・国際細胞検査士の資格を有し、甲状腺細胞診を専門とする細胞検査士が細胞診標本を確認し、検体の評価を行っています。
甲状腺細胞診では、良性・悪性の判断が難しい症例や、採取された細胞が少ない症例など、専門的な知識と経験を要することがあります。
そのため当院では、甲状腺診療を専門とする医師による細胞採取に加え、甲状腺細胞診に精通した細胞検査士による専門的な検体評価を行うことで、細胞診の診断精度を高めることを大切にしています。
「細胞を適切に採取すること」から「採取された細胞を適切に評価すること」まで。
甲状腺専門クリニックとして、一つひとつの細胞診検査を丁寧に行っています。
「以前の細胞診で細胞が取れなかった」という方へ
実際の診療では、
「他院で細胞診を受けたけれど、細胞が十分に取れなかったと言われました」
「もう一度細胞診を受ける必要があると言われました」
というご相談を受けることがあります。
細胞が十分に採取できなかった場合には、単に「もう一度針を刺す」のではなく、前回の超音波画像や細胞診の結果を確認し、なぜ十分な細胞が採取できなかったのかを考えることが大切です。
当院では、結節の大きさや位置、内部性状などを改めて超音波で評価し、その結節から診断に必要な細胞を採取するために、どのように穿刺することが適切かを検討して検査を行います。
甲状腺の細胞診は、単に「針を刺して細胞を採る」だけの検査ではありません。
結節を正確に観察し、適切に細胞を採取し、採取された細胞を専門的に評価する。
当院では、この一連の過程を大切にし、甲状腺の結節をより正確に診断するための細胞診を行っています。
この記事の監修者
横浜甲状腺クリニック
院長淡野 宏輔
内分泌・代謝内科医として診療経験を積んだ後、
甲状腺専門病院である隈病院および昭和医科大学横浜市北部病院甲状腺センターで研鑽を積み、バセドウ病や橋本病、甲状腺腫瘍など幅広い甲状腺疾患の診療に従事。
これまで培った知識と経験を生かし、甲状腺専門医として患者さま一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。
資格など
- 医学博士
- 日本甲状腺学会 専門医
- 甲状腺超音波ガイド下穿刺診断 専門医
- 日本乳腺甲状腺超音波医学会 評議員
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 難病指定医
主な経歴
- 筑波大学医学専門学群 卒業
- 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士課程修了
- 筑波大学附属病院
- 国立病院機構 災害医療センター
- 医療法人みなとみらい 浦舟金沢内科クリニック
- 医療法人神甲会 隈病院
- 医療法人みなとみらい みなとみらいクリニック 院長
- 昭和医科大学横浜市北部病院 甲状腺センター
この記事の監修者
横浜甲状腺クリニック
院長淡野 宏輔
内分泌・代謝内科医として診療経験を積んだ後、
甲状腺専門病院である隈病院および昭和医科大学横浜市北部病院甲状腺センターで研鑽を積み、バセドウ病や橋本病、甲状腺腫瘍など幅広い甲状腺疾患の診療に従事。
これまで培った知識と経験を生かし、甲状腺専門医として患者さま一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。
資格など
- 医学博士
- 日本甲状腺学会 専門医
- 甲状腺超音波ガイド下穿刺診断 専門医
- 日本乳腺甲状腺超音波医学会 評議員
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 難病指定医
主な経歴
- 筑波大学医学専門学群 卒業
- 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士課程修了
- 筑波大学附属病院
- 国立病院機構 災害医療センター
- 医療法人みなとみらい 浦舟金沢内科クリニック
- 医療法人神甲会 隈病院
- 医療法人みなとみらい みなとみらいクリニック 院長
- 昭和医科大学横浜市北部病院 甲状腺センター







