急性化膿性甲状腺炎とは、細菌や真菌により甲状腺やその周囲に炎症、化膿を起こす病気です。
熱が出て、甲状腺が痛みをもって腫れます。
痛みは食事や水などを飲み込むときに強くなります。
炎症が進行すると、炎症部位の皮膚が赤く腫れてきます。
細菌や真菌の感染経路
下記の2つの経路により、細菌や真菌が甲状腺に感染します。
下咽頭梨状窩瘻(かいんとうりじょうかろう)を通じての感染
下咽頭梨状窩瘻とは、食道の入口(下咽頭)にあるくぼみ(梨状窩)から甲状腺に向かって通る細い管で、胎生期の発生異常で生じ、ごく一部の人にしかありません。
細菌や真菌がこの管を通じて甲状腺に感染し、炎症を起こします。
小児や若い世代の人に多く、ほとんどが左側の甲状腺に発症します。
甲状腺腫瘍への感染
嚢胞変性(腫瘍の一部が液状に変性)や壊死を伴う腫瘍への感染によって起こります。
「尿路感染症などの原因菌が、血液を伝わって腫瘍に感染する場合」と「穿刺吸引細胞診の際、腫瘍に針を刺すことで感染する場合」があります。
糖尿病、免疫不全、アトピー性皮膚炎などが感染のリスクとされています。
検査と診断
血液中の白血球やCRPなど、炎症を示す数値が高くなります。
超音波検査では、甲状腺内部および甲状腺周囲に炎症所見(炎症性低エコー)を認めます。
炎症部位を注射器で穿刺吸引すると膿汁(うみ)が得られ、細胞診と細菌検査に提出します。
細胞診では、炎症細胞(好中球)や梨状窩瘻由来の細胞(扁平上皮細胞)と細菌が確認され、細菌検査では原因菌の特定が行われます。
下咽頭梨状窩瘻が疑われる場合は、バリウム造影剤を飲み、咽頭食道のレントゲン検査で梨状窩から甲状腺に向かう細い管(瘻孔)を確認します。
治療
抗菌薬の点滴、穿刺もしくは切開して膿を出す処置によって炎症を落ち着かせます。
下咽頭梨状窩瘻の場合は、繰り返し炎症が再発することがあるため、瘻孔を摘出もしくは閉鎖する処置(下咽頭梨状窩瘻化学焼灼療法)を行います。
甲状腺腫瘍の感染は治療が長引くことがあり、甲状腺切除による腫瘍の摘出が必要な場合があります。