甲状腺の腫瘍やバセドウ病などで甲状腺を切除すると、甲状腺ホルモンを作り出す能力が低下します。
甲状腺全摘術(甲状腺を全て摘出する手術)を行うと、必ず甲状腺機能低下症になり、生涯にわたり甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS) を服用し続ける必要があります。
甲状腺片葉切除(甲状腺の片側だけ切除する手術)では、およそ20~40%の人が、手術後に甲状腺機能低下症となります。
甲状腺全摘後における「甲状腺ホルモン薬」の服用について
甲状腺を全摘し、甲状腺が全く無い状態で甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を服用した場合、TSH(甲状腺刺激ホルモン)とFT4値が正常範囲内であっても、FT3値が低く、「寒がりになった」「動作が鈍くなった」などの甲状腺機能低下症の症状がしばしば起こります。
このような状態の場合、FT3値が正常になるように(手術前と同じくらいの値になるように)、チラーヂンSを多めに服用していただくと症状は改善します(その際、「TSH値は正常下限値よりやや低め」になり、「FT4値は正常上限値よりやや高め」になります)。
「生体のエネルギーを作り出し、熱の産生を高める」といった甲状腺ホルモンとしての作用は、T3のほうがT4に比べて10倍ほど強力です。
服用したチラーヂンS(T4製剤)は、消化管から吸収されて血管に入り、「生理作用の弱いT4」はさまざまな臓器で「生理作用の強力なT3」に変換され、甲状腺ホルモンとしての役割を発揮するようになります。
したがって、FT4値が正常範囲内であっても、FT3値が低ければ、甲状腺機能低下症の症状が起こるので、FT3値が正常になるようにチラーヂンSの服薬量を調整する必要があるのです。
このことは、甲状腺専門病院である隈病院の多数例の検討で明らかにされています (Eur J Endocrinol 167: 373-378, 2012)。
この記事の監修者
横浜甲状腺クリニック
院長淡野 宏輔
内分泌・代謝内科医として診療経験を積んだ後、
甲状腺専門病院である隈病院および昭和医科大学横浜市北部病院甲状腺センターで研鑽を積み、バセドウ病や橋本病、甲状腺腫瘍など幅広い甲状腺疾患の診療に従事。
これまで培った知識と経験を生かし、甲状腺専門医として患者さま一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。
資格など
- 医学博士
- 日本甲状腺学会 専門医
- 甲状腺超音波ガイド下穿刺診断 専門医
- 日本乳腺甲状腺超音波医学会 評議員
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 難病指定医
主な経歴
- 筑波大学医学専門学群 卒業
- 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士課程修了
- 筑波大学附属病院
- 国立病院機構 災害医療センター
- 医療法人みなとみらい 浦舟金沢内科クリニック
- 医療法人神甲会 隈病院
- 医療法人みなとみらい みなとみらいクリニック 院長
- 昭和医科大学横浜市北部病院 甲状腺センター







