甲状腺を構成する濾胞(ろほう)細胞から発生する悪性腫瘍で、癌細胞が乳頭状に集まって成長します(乳腺や乳癌とは関係ありません)。
甲状腺癌の約90%を占め、10年生存率は約90%以上と甲状腺癌のなかで最も良好です。
ゆっくり発育し、命にかかわることがあまりない、性格のおとなしい癌です。
頚部のリンパ節に転移することがありますが、肺や骨など離れた臓器への転移は少ないです。
診断
超音波検査で悪性所見を認める腫瘍に対し穿刺吸引細胞診を行い、乳頭癌に特徴的な核をもつ細胞を多数認めれば、乳頭癌と診断されます。
治療
「超低リスク乳頭癌」の場合
腫瘍の大きさが10mm以下の乳頭癌を「微小乳頭癌」といいます。
微小乳頭癌のうち、「離れた臓器やリンパ節への転移がなく、腫瘍が甲状腺外に広がっていない」場合は、将来進行するリスクが低く、「超低リスク乳頭癌」といい、手術は行わずに経過観察することが推奨されています(経験豊富な医師や超音波検査技師による注意深い経過観察は必要です)。
もし経過観察中に進行したとしても、その時点で手術を行えば手遅れになることはありませんが、経過観察のみで心配な方には、手術やラジオ波焼灼術を行います。
ラジオ波焼灼術では、腫瘍を熱で焼きつぶすことで、腫瘍の縮小・消失効果が望めます。
「超低リスク乳頭癌以外」の場合
「超低リスク乳頭癌以外の乳頭癌」に対しては、進行度に応じた手術(甲状腺切除とリンパ節郭清)が行われます。
再発や転移を認めた場合、再手術やアイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)、分子標的薬治療、放射線外照射療法が行われます。