甲状腺を構成する濾胞(ろほう)細胞から発生する悪性腫瘍で、ゆで卵の薄い膜のような被膜で包まれ、ゆっくりと発育していくのが特徴です。
いくつかの癌細胞が集まって「濾胞」とよばれる球体のような形をつくっているため、「濾胞癌」と呼ばれます。
甲状腺癌の5%ほどを占め、10年生存率は約85%です。
リンパ節への転移が少ないものの、肺や骨などに転移することがあります。
診断
超音波検査や穿刺吸引細胞診を行っても、良性の「濾胞腺腫」と見分けられない場合が多く、手術で腫瘍を摘出した後、顕微鏡で腫瘍の全体像を調べたうえで正確な診断が行われます。
「腫瘍を包んでいる膜(被膜)を腫瘍細胞が突き破っている」もしくは「腫瘍内や腫瘍周辺の血管に腫瘍細胞が侵入している」ことが確認されれば、濾胞癌と診断されます。
治療
「腫瘍の表面が不整」「腫瘍が硬い」「腫瘍の大きさが3~4cm以上」「腫瘍が増大傾向にある」「血液中のサイログロブリン値が非常に高い」など、悪性の可能性があると考えられる場合、手術で腫瘍とともに甲状腺の半分を切除(葉切除)、もしくは全てを切除します(全摘)。
切除した腫瘍の組織検査で濾胞癌と診断された場合、悪性度に応じて、アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)を行うことがあります。
再発や転移を認めた場合、再手術やアイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)、分子標的薬治療、放射線外照射療法が行われます。