神奈川県横浜市の甲状腺クリニック 横浜甲状腺クリニック 港北区 新横浜駅

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ヨウ素摂取について

ヨウ素とは

ヨウ素は海産物に多く含まれている元素のひとつで、甲状腺ホルモンの主原料です。

甲状腺のなかにヨウ素が取り込まれ、甲状腺ホルモンを合成します。

甲状腺ホルモンを作るために必要なヨウ素の量はごくわずかで、1日95~130μgといわれています。

日本人のヨウ素摂取状況

世界的にはヨウ素が不足する地域が多いですが、日本は周囲を海に囲まれて海産物が豊富であり、ヨウ素が不足することはまずありません。

日本人1日あたりのヨウ素摂取量は200~500μg程度であり、日本人は必要量以上のヨウ素を摂取しています(日本甲状腺学会雑誌 13: 106-111, 2022)。

ヨウ素過剰摂取の影響

ヨウ素を過剰に摂取し続けた場合、甲状腺ホルモンが過剰に作られるということはなく、かえって甲状腺ホルモンが作られなくなり、甲状腺機能が低下します(ウォルフ-チャイコフ効果)。

通常ではこの現象は長く続かず、2~3週間で甲状腺機能は正常に回復します(エスケープ現象)。

このように、甲状腺にはヨウ素を摂り過ぎても問題の起こらない仕組みが備わっています。

ところが、なかにはエスケープ現象が起こらずに甲状腺機能が低下したままになる人がいます。

橋本病の人に多くみられますが、甲状腺の病気がない人でもみられることがあります。

ヨウ素を多く含む代表的なものは「昆布」「ひじき」などの海藻類や「イソジンうがい液」で、これらを続けて摂取することをやめれば、甲状腺機能は回復します。

橋本病(慢性甲状腺炎)とヨウ素摂取

「ヨウ素過剰摂取の影響」でも述べた通り、橋本病の人がヨウ素を多く含んだ食品を食べ続けたり、イソジンうがい液を多用すると、甲状腺機能が低下することがあります。

その場合、ヨウ素の過剰摂取を控えることで、甲状腺機能は回復します。

甲状腺機能が正常の場合は、現在の食事の摂り方で特に問題はないかと思われます。

ただし、橋本病の人は、甲状腺の病気がない人よりもヨウ素過剰の影響を受けやすいので、昆布やひじきなど、ヨウ素を多く含む食品を積極的に摂ることは避けておいた方が望ましいでしょう(たまに食べる程度であれば構いません)。

甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を服用している場合は、ヨウ素の影響を受けないため、ヨウ素制限についてあまり気にする必要はありません。

バセドウ病とヨウ素摂取

バセドウ病ではヨウ素制限は必要ありません。

ヨウ素が欠乏している地域では、ヨウ素の過剰摂取によって一気に甲状腺ホルモンの合成が活発化し、ヨウ素誘発性甲状腺機能亢進症が発症することがあります。

一方、ヨウ素が充分足りている日本では、ヨウ素誘発性甲状腺機能亢進症が発症することはほとんどなく、むしろヨウ素摂取によって甲状腺ホルモンの合成が抑制され、治療に用いられることがあります。

アイソトープ検査・治療におけるヨウ素制限

アイソトープ検査アイソトープ治療では、放射性ヨウ素が使われます。

ヨウ素が甲状腺に集まる性質を利用して行うため、食事からヨウ素を摂取してしまうと、甲状腺や甲状腺癌細胞に放射性ヨウ素が取り込まれにくくなり、検査の感度や治療効果が下がります。

したがって、ヨウ素制限を厳格に行う必要があり、「アイソトープ検査」と「バセドウ病のアイソトープ治療」では1週間前、「甲状腺癌のアイソトープ治療」では2週間前からヨウ素を含む食品の摂取を制限します。

癌細胞は正常な甲状腺細胞と比べてヨウ素を取り込む能力が低いため、ヨウ素制限の期間を長く設けて、放射性ヨウ素がより取り込まれやすい状態にします。

ヨウ素を含む食品

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人における1日のヨウ素所要量(推奨量)は130μg、上限量は3,000μgとされています。

造影検査と甲状腺疾患

造影剤の種類

X線検査で使用される造影剤には、ヨウ素が含まれている「ヨード造影剤」とヨウ素が含まれていない「硫酸バリウム」があります。

「ヨード造影剤」には「水溶性」と「油性」があり、甲状腺に与える影響はそれぞれの造影剤で異なります。

MRIや超音波検査で使用する造影剤にはヨウ素が含まれておらず、甲状腺への影響はありません。

橋本病(慢性甲状腺炎)と造影剤

「水溶性ヨード造影剤」は造影CT検査や血管造影検査、腎盂・尿管造影検査で使用され、注射後は速やかに体外に排泄されるため、ヨウ素の影響は短時間ですみ、問題になることはありません。

「油性ヨード造影剤(リピオドール)」は子宮卵管造影検査やリンパ管造影検査に用いられ、体内に注入後もなかなか排泄されず長くとどまり、半年ほどは甲状腺機能低下症になることがあるため、検査後は定期的に甲状腺機能を調べる必要があります。

不妊症の子宮卵管造影検査に用いられる造影剤には、「油性ヨード造影剤(リピオドール)」と「水溶性ヨード造影剤(イソビスト)」があります。

近年は安全性の観点から「水溶性ヨード造影剤(イソビスト)」が用いられることが多くなりましたが、油性にも利点があり、「油性ヨード造影剤(リピオドール)」が使用されることもあります。

子宮卵管造影検査を受けられる際は、用いる造影剤の種類について、婦人科・甲状腺科の双方の医師と相談してください。

バセドウ病と造影剤

ヨード造影剤の添付文書には、「重篤な甲状腺疾患には使用禁忌(使用してはいけない)」と記載されています。

「造影剤の適正使用推進ガイド FAQ(臨床画像 23: 96-102, 2007)」によると、「重篤な甲状腺疾患」とは「甲状腺機能がコントロールされていない甲状腺機能亢進症」を指しています。

実際、甲状腺ホルモンが高い状態でヨード造影剤を使用して、甲状腺クリーゼ(生命にかかわる危険な状態)になったという報告があります。

したがって、バセドウ病の人でヨード造影剤を使用する検査が必要な場合、甲状腺機能が正常化した状態で検査を受けることが望ましいといえます。

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