神奈川県横浜市の甲状腺クリニック 横浜甲状腺クリニック 港北区 新横浜駅

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バセドウ病

バセドウ病とは

甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気で最も多いのが「バセドウ病」です。

20~30歳代の女性に比較的多くみられますが、男性も少なくなく、小児~思春期や中高年でも起こります。

甲状腺に対する抗体(抗TSH受容体抗体、TRAb)ができ、これが絶えず甲状腺を刺激し続けるために、甲状腺ホルモンが過剰に作られるようになります。

抗体ができる原因ははっきりわかっていませんが、遺伝的な要因や「強いストレス」「喫煙」「出産」などがきっかけになると考えられています。

バセドウ病の症状

甲状腺ホルモンが多すぎると全身の代謝が高まって、常に運動をしている時のような状態になり、全身にいろいろな症状が出ます。

また、「首の腫れ」や「眼球突出などの目の症状(甲状腺眼症)」があらわれることもあります。

心臓にあらわれる症状

動悸、頻脈、息切れ

過剰になった甲状腺ホルモンが心臓の筋肉を刺激しすぎるため、「じっとしていても、動悸がする、脈が速い」「階段や坂道をのぼると、ひどく息切れがする」などの症状がでます。

不整脈(心拍リズムの乱れ)

不整脈の一種の「心房細動」や「心室性不整脈」などが起こることがあります。

心房細動になると、心臓がけいれんしたようになり、心臓の中の血液がよどみ、血液のかたまり(血栓)ができやすくなります。

血栓が血液に乗って脳に運ばれて、脳の血管を詰まらせてしまうと脳梗塞になります。

また、心臓が動き疲れてしまうと、心臓の動きがだんだん悪くなり、息切れやむくみを引き起こします(心不全)。

心房細動は甲状腺機能が正常になれば、数か月の間に約半数の人が治ります。

治らない場合は、心房細動を止める治療を行います。

全身のエネルギー消費が増えることによる症状

疲れやすい

体力を消耗するために疲れやすくなり、いくら休んでも疲れやすさはとれません。

特に、朝がだるく感じることがあります。

暑がりになる、汗をかきやすい

代謝が激しくなるために体温が上がり、汗をかくようになります。

いつも37℃台の微熱があったり、夏を苦手に感じることもあります。

汗を多くかくため、手はしっとりと湿った印象をあたえます。

体重が減る

食欲があり、たくさん食べるのに痩せてくるようになります。

なかには過食により体重が増える場合もあります。

消化管にあらわれる症状

下痢、軟便

消化管の働きが活発になりすぎて、便の回数が多くなり、下痢を起こしやすくなります。

血糖値が高くなる

消化管の働きが良くなるため、食べた物の吸収が急速に進み、食後の血糖値が高くなります。

神経や筋肉、骨にあらわれる症状

手足が震える

指先が震えるため(手指振戦)、文字が書きづらくなったり、細かい作業が困難になります。

下肢が細かく震えることもあります。

筋力が弱くなる

太ももやお尻、腰の筋肉の力が弱くなり、立ち上がるとき、足に力が入りにくくなります。

骨粗鬆症

骨は常に新陳代謝を繰り返していて、古くなった骨はいったん壊されたあと、新しく修復され、新しく作りかえています。

バセドウ病では骨の新陳代謝が高まり、なかでも骨が壊れる方向に働くため、骨粗鬆症が起こりやすい状態になっています。

甲状腺機能が改善すれば、骨の状態も改善されます。

ただし、閉経後の女性や高齢者でもともと骨密度が低下していた場合は、甲状腺機能が改善しても、骨の状態が十分に改善されないこともあります。

周期性四肢麻痺

炭水化物や甘いものを大量に食べたり、大量飲酒や運動をしたあとに、急に手足の力が抜けて動けなくなることがまれにあります。

ほとんどが男性に起こり、甲状腺機能が改善すれば軽快します。

髪の毛や皮膚にあらわれる症状

髪の毛が抜けやすい(脱毛症)

毛髪の新陳代謝が活発になりすぎて、発毛途中の短く細い髪の毛が抜けやすくなります。

また、円形脱毛症を合併することもあります。

円形脱毛症もバセドウ病と同じ、自己免疫疾患と考えられています。

かゆみ

皮膚の細い血管が広がったり、皮膚の温度が高くなることにより、皮膚がかゆくなることがあります。

皮膚の色が変化する

皮膚が色素沈着を起こし、色が濃くなることがあります。

逆に白斑といって、皮膚の一部が白くなってしまうこともあります。

脚がむくむ

下腿(膝から足首まで)が全体的にむくむことがあります。

まれに、前脛骨粘液水腫といって、すねの前面の皮膚がこぶのように赤く硬く盛り上がることがあり、ムコ多糖という物質が皮膚にたまることで起こります。

皮膚科での治療が必要で、ステロイドテープ剤・軟膏などで治療を行います。

爪が変形する

爪の伸びが早くなり、爪の先の方から浮き上ってはがれることがあり、爪甲剥離症といいます。

月経の異常、性機能への影響

女性では月経が少なくなり、月経不順を起こします。

男性ではまれに、片側あるいは両方の乳房が大きくなることがあります。

女性化乳房といい、乳輪の下に円盤状のしこりを認め、痛みを伴うことが多いです。

女性と比べるとわずかですが、男性も女性ホルモン(エストロゲン)を体内に持っており、男性ホルモン(アンドロゲン)が筋肉や脂肪組織などで変換されて作られます。

甲状腺ホルモンが過剰になると、男性ホルモン(アンドロゲン)から女性ホルモン(エストロゲン)へ変換が促され、女性ホルモンの作用が強くなるために、乳腺組織が増殖します。

一方、男性ホルモンの作用は相対的に弱くなるため、勃起障害を起こしたり、精子数が減少します。

治療により甲状腺機能が改善すれば、これらの症状は治ります。

精神面への影響

落ち着きがなくなり、集中力が低下します。

ちょっとしたことで過剰に反応し、イライラし、怒りやすくなったり、時には気分が沈んだり、不安を感じることもあります。

せっかちになり、多弁で早口になります。

音に過敏になったり、びっくりしやすくなることもあります。

寝つきが悪くなり、途中で目覚めやすくなります。

高齢者の場合は、元気がなくなり、うつ状態になることがあります。

検査と診断について

血液検査

血液検査で「甲状腺ホルモン(FT3、FT4)」と「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」を測定し、甲状腺機能を調べます。

また、「TSH受容体抗体(TRAb)」や「甲状腺刺激抗体(TSAb)」を測定し、甲状腺対する免疫反応を調べます。

多くの場合、TRAbやTSAbが陽性になります。

超音波検査

超音波検査で甲状腺全体の大きさ、甲状腺内部の血液の流れなどを調べます。

アイソトープ検査

血液検査や超音波検査で診断が難しい場合は、アイソトープ検査を行います。

治療について

治療には、「薬物療法」「アイソトープ治療」「手術」の3種類があり、まず最初は「薬物療法」で治療します。

薬の服用を続けるうちに、甲状腺機能が正常になり、TSH受容体抗体(TRAb)が下がるのを待ちます。

薬が合わなければ、アイソトープ治療か手術を行います。

薬物療法

薬物療法で用いられる薬として、「抗甲状腺薬」「ヨウ化カリウム」があります。

アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)

抗甲状腺薬がうまく効かなかったり、副作用が強くて薬の服用が継続できない場合、手術後に再発した場合に用いられます。

詳しくはこちらをご覧ください。

手術

薬物療法やアイソトープ治療が適さない場合、甲状腺腫瘍がある場合に手術が行われます。

かつては甲状腺の一部を残す「亜全摘」が行われていましたが、再発するケースが少なくないため、現在では甲状腺をすべて取り除く「全摘」が主流になっています。

甲状腺を全摘した後は甲状腺ホルモンが作られなくなるので、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を服用することになります。

甲状腺眼症

主にバセドウ病でみられる眼の合併症で、軽度の症状を含めると、およそ25~50%の患者さんに起こるとされています。

甲状腺眼症の症状

甲状腺眼症では、下記のような症状がみられます。

  • 上まぶたがつり上がる(上眼瞼後退)
  • まぶたが腫れる(眼瞼腫脹)
  • 眼が突出する(眼球突出)
  • 眼が充血する(結膜充血)
  • 眼の奥が痛む(後眼窩自発痛)
  • 上下や左右に眼球を動かしたときに眼球が痛む(眼球運動時痛)
  • 視力低下
  • 物が二重に見える(複視)
  • まぶたが閉じないため角膜に傷がつく(角膜障害) など

「上眼瞼後退」の約3割は甲状腺機能亢進と関連しており、バセドウ病の治療により甲状腺機能が改善すれば徐々に治まります。

それ以外の症状は、眼を動かす筋肉(外眼筋)や眼球のまわりにある脂肪組織が、免疫の異常によって炎症を起こして腫れ、眼窩(眼球が入っている頭蓋骨のくぼみ)の中の圧力が高まるために生じます。

特に「視力低下」は、外眼筋が急激に腫れて視神経が圧迫されたとき(甲状腺性視神経症)や角膜に潰瘍・穿孔・壊死が生じたときの症状で、「悪性眼球突出症」といい、失明の危険性があるため緊急性が高く、速やかな治療が必要になります。

慢性的な炎症により外眼筋が傷害をうけると、筋肉の組織が過剰に修復され、硬くなってしまいます。

これを「線維化」といい、外眼筋は縮むことはできても、伸びることができなくなってしまいます(伸展障害)。

4つの外眼筋(上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋)のいずれかの筋肉の線維化が強く、伸展障害が起こると、左右の眼球の動きがバラバラになって「複視」が生じます。

治療について

眼科医が甲状腺専門医と連携して眼症の治療にあたります。喫煙をしている場合は、禁煙することが大前提となります。

喫煙は眼症を悪化させ、後で述べるステロイドや放射線治療の効果が得られにくくなります。

甲状腺機能の正常化をはかりつつ、治療方針は「眼に炎症がある状態(活動期)」か「炎症がない状態(非活動期)」で分かれ、活動性の評価は眼窩MRIで行います。

「活動期」には、炎症を抑えるために「ステロイドパルス療法」と「放射線外照射療法」を行います。

数回に分けてステロイドの点滴注射と放射線照射を行った後、ステロイド内服薬を3~6か月かけて、少しずつ量を減らしながら服用します。

「非活動期」には、複視が強い場合は外眼筋手術、眼球突出や眼瞼腫脹、上眼瞼後退に対し、眼窩減圧術や眼瞼手術が行われます。

甲状腺クリーゼ

バセドウ病の治療を受けていない、あるいは抗甲状腺薬の服用を中断していて、甲状腺機能亢進症が悪化した状態で、「感染症、手術、抜歯、大けが」などの強いストレスを受けると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に身体が耐え切れなくなり、複数の臓器の機能が低下します。

この状態を「甲状腺クリーゼ」といい、高熱が出て、脈が速くなり、意識がもうろうとし、嘔吐や下痢、黄疸(全身が黄色くなる)、心不全をきたし、最終的には死に至ることがあります。

生命を脅かす危険な状態にあるため、集中治療室に入院して、呼吸や血圧の管理を行い、大量の抗甲状腺薬、無機ヨウ素薬、ステロイド薬を投与します。

甲状腺クリーゼの致死率は10%以上と報告されており、適切な治療が行われても救命できないことがあるため、発症しないよう十分注意する必要があります。

甲状腺クリーゼの多くが、抗甲状腺薬の服用を自己判断で止めてしまったり、服用を忘れてしまった場合に発症しています。

服薬は規則的におこない、定期的に受診することが大切です。

また、高熱が出たり、意識がもうろうとした場合は、甲状腺クリーゼの可能性があるため、救急車を呼ぶなどして、なるべく早く医療機関を受診してください。

日常生活を送るうえでの注意点

ストレスへの対処

ストレスはバセドウ病の治療経過に悪影響を与えます。

たとえば「過剰適応」といって、「まわりに合わせて無理をしすぎる」傾向がある人は、バセドウ病が治りにくいことがわかっています。

まず、日常の生活の中で「ストレスがかかっていないか」「頑張りすぎていないか」「無理をしていないか」振り返ってみてください。

ストレスを感じていたり、無理をしすぎていることに気がついたら、その内容を家族や周囲の人達に伝え、家庭や職場の環境を改善していくことが大事です。

場合によっては医師の診断書を職場に提出し、就業上の配慮をいただく必要があるかもしれません。

また、ゆっくり休んだり、しっかりと睡眠をとることも大切です。

睡眠の乱れは精神面に悪影響を及ぼします。

甲状腺機能が亢進している状態では不眠になりやすいため、無理をせずに睡眠薬の助けを借りることも賢明な方法です。

趣味やスポーツ、家族や友人とのおしゃべり、一人でゆっくりと過ごすなど、自分なりのストレス解消法をもつことも大切です。

運動について

甲状腺機能が亢進している状態では、心臓などに負担がかかっているため、激しい運動は控えてください。

運動をすることで心臓に更に負担をかけてしまうと、不整脈や心不全を起こすリスクが高くなります。

甲状腺機能が正常になったら、軽い運動から始めて少しずつ体を慣らしてください。

甲状腺機能が亢進していた時期に筋力が低下しやすいので、運動再開時には注意が必要です。

食事について

治療によって甲状腺機能が改善すると、エネルギー消費量が低下するので体重が増えやすくなります。

甲状腺機能が正常になった後も、数か月間は食欲がもとに戻らないことが多く、食欲に合わせてたくさん食べていると太るので、食べる量をもとの量に戻す必要があります。

喫煙について

タバコを吸っていると抗甲状腺薬の効きが悪くなり、薬がやめられたとしても再発しやすくなります。

また、甲状腺眼症を起こすリスクが高まり、甲状腺眼症に対する治療効果も得にくくなります。

タバコを吸っている人は、必ず禁煙しなければなりません。

他人が吸っているタバコの煙もリスクになりますので、周囲の方々の協力も必要です。

花粉症について

花粉症などのアレルギーにより、バセドウ病が悪化したり、再発することがあります。

花粉症を悪化させないよう、しっかり治療を行う必要があります。

妊娠・出産に関する注意点

詳しくはこちらをご覧ください。

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